鍼灸治療 適応疾患

鍼灸治療の適応疾患について
鍼灸は、身体の自然治癒力を高め、痛みや不調をやわらげる東洋医学の一つです。
その効果は世界的にも注目されており、さまざまな疾患に対して鍼灸が有効であると認めています。
鍼灸施術の治療的作用
【調整作用】
組織、期間に一定の刺激を与えて、その機能を調整する作用
①興奮作用
知覚の鈍麻、消失あるいは運動麻痺のような神経機能の減弱および内臓諸器官の機能減退に対して興奮させる作用
②鎮静作用
疼痛や痙攣のように異常に機能が興奮している疾患に対して、鎮静させる作用
【誘導作用】
幹部に直接刺鍼施灸するか、または遠隔部に刺鍼施灸して、その部の血管に影響を及ぼし充血を起こし、患部の血量を調節する
①患部誘導法
局所の血行障害に対し、直接その患部に施術して、血流を他の健康部から誘導する方法
②健部誘導法
局所の充血または炎症などの際に、その部位より少々隔たった部に施術し、血液をそちらに誘導し、患部の血量を調整する方法
【鎮静作用】
内因性モルヒネ様物質あるいは下行性抑制などの機序により、鎮痛作用が発現する
【防御作用】
白血球や大貪食細胞などを増加させて、各種疾患の治癒機能を促進させ、生体の防御能力を高める作用
【免疫作用】
免疫力を高める作用
【消炎作用】
施術により白血球は増加し、施術部位に遊走する。また、血流改善により病的滲出物などの吸収を促進させ、生体の防御能力を高める作用
【転調作用】
自律神経失調症やアレルギー体質を改善して、体質を強壮にする作用
【反射作用】
痛み刺激あるいは温熱刺激による反射機転を介して、組織、臓器の機能を鼓舞あるいは抑制する
鍼灸施術の治療的作用
灸施術については施灸後の血液、赤血球、血色素量など、血液凝固時間の短縮、あるいは循環系に対する作用が認められる
①増血作用
②止血作用
③強心作用

鍼の対象となる疾患(WHOの見解)
【上気道疾患】
急性副鼻腔炎・急性鼻炎・感冒・急性扁桃炎
【呼吸器疾患】
急性気管支炎・気管支喘息(合併症がないもの)
【眼疾患】
急性結膜炎・中心性網膜炎・近視(小児)・白内障(合併症がないもの)
【口腔疾患】
歯痛・抜歯後疼痛・しゃっくり・胃下垂・急性慢性胃炎・胃酸過多症・慢性十二指腸潰瘍(除痛)・急性十二指腸潰瘍(合併症のないもの)・急性・慢性腸炎・急性細菌性赤痢・便秘・下痢・麻痺性イレウス
【神経・筋・骨疾患】
頭痛・片頭痛・三叉神経痛・顔面神経麻痺(初期、3~6か月以内)・脳卒中後の不全麻痺・末梢神経障害・急性灰白髄炎の後遺症(初期、6か月以内)・メニエール病・神経因性膀胱・夜尿症・肋間神経痛・頚腕症候群・五十肩・テニス肘・坐骨神経痛・腰痛・変形性関節症
米国国立衛生研究所(NIH)より
【明確な効果があるとされる症状】
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術後の吐き気・嘔吐
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化学療法による吐き気
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妊娠初期のつわり
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術後の歯科の痛み
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慢性的な腰痛
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月経痛(生理痛)
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顎関節症(TMJ)
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テニス肘(外側上顆炎)
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坐骨神経痛
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肩こり・五十肩
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喘息
【補完療法として有効とされる分野】
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中風(脳卒中)のリハビリ
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頭痛(緊張性頭痛・片頭痛)
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関節炎(特に変形性膝関節症)
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筋筋膜性疼痛症候群
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中毒治療(アルコール・薬物依存の離脱症状の軽減)
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不妊治療の補助
その他、鍼灸の適応症となるもの
【循環器系】
本態性高血圧症、本態性低血圧症、神経性狭心症、不整脈の一部、動悸、息切れ、心臓神経症など
【呼吸器系】
気管支喘息、過呼吸症候群、神経性咳嗽、風邪による諸症状の緩和など
【消化器系】
消化性胃潰瘍、潰瘍性大腸炎、過敏性大腸症候群、下痢便秘症、神経性嘔吐症、腹部膨満症、呑気症、神経性食思不振症、痔疾など
【内分泌代謝系】
肥満症、糖尿病、心因性大飲症、甲状腺機能亢進症、脚気、痛風、貧血など
【神経系】
頭痛、筋緊張性頭痛、自律神経失調症、神経痛、神経麻痺、脳卒中後遺症、不眠など
【生殖・頻尿器系】
腎炎、夜尿症、過敏性膀胱、インポテンツなど
【運動器系】
慢性関節リウマチ、頚腕症候群、五十肩、腰痛症、膝関節痛、全身性筋肉痛、外傷性神経症、書痙、痙性斜頚、チック、脊椎過敏症など
【皮膚系】
神経性皮膚炎、皮膚掻痒症、湿疹、円形脱毛症、多汗症、慢性蕁麻疹など
【耳鼻咽喉科系】
メニエール症候群、咽喉頭部異物感症、難聴、耳鳴り、乗り物酔い、嗄声、失声、吃音など
【眼科系】
原発性緑内障、老人性白内障、眼精疲労(疲れ目・ドライアイ等)、眼瞼痙攣など
【婦人科系】
不感症、月経痛、無月経、不妊症、更年期障害など
【小児科系】
小児疳の虫、夜尿症、夜驚症、腺病質、アレルギー、小児消化不良症など
【その他】
臀部・腰部・手足の冷え、肩凝り、のぼせ、不眠等の不定愁訴など

当院の鍼灸治療
【中医学の考えを基に、鍼灸治療を行います】
▶中医学(ちゅういがく)
人体の生理・病理・疾病の発生と発展過程を研究するとともに、診療法則と理法方薬のすべてを備えている、中国特有の医学学科。その内容には3つの面が含まれている。
①基礎医学理論:主に人体の生理、病理および健康と疾病の関係の研究。
その内容は陰陽五行・運気・養生・未病・臓腑経絡・気血津液・病因病機などの学説が主なものである。
②臨床医学各科:主に臨床各科の疾病の特徴および診療法則の研究。
内容には内科・外科・婦人科・小児科・骨料(軽形外科)・五官科などの各料、さらには望閉間切の四診、八網・酸時・気血津液・六経・衛気管血などの各弁証方法,扶正祛邪・陰陽の調整・治病求本・三因制宜(因人・因地・因時)などの治療原則。中薬・針灸・推拿・按摩・導引などの各種の治療方法が含まれている。
③中薬剤理論:中薬理論では主に各種の中薬の来源・採集炮製・性能効能および応用方法などを研究する。
方剤理論では主に処方原則・効用効果およびその使用方法・適応証などを研究する。
【中医学的の診察方法】
①望診(神技)
術者の視覚を通じて病態を診察する方法
②聞診(聖技)
術者の聴覚・嗅覚を通じて病態を診察する方法
③問診(工技)
患者との対話を通じて病態を診察する方法
④切診(巧技)
術者の触覚を通じて病態を診察する方法
【施術方法】
①鍼
ステンレス製、単回使用の鍼を使用します
刺入するもの:毫鍼・中国鍼など
刺入しないもの:接触鍼・小児鍼など
②灸
台座灸・棒灸・知熱灸(もぐさを捻って据える方法)
③吸い玉・カッピング
ドライ法、必要に応じてウェット法
④徒手療法
マッサージ・ストレッチ、筋膜リリース、PNF、関節可動域調整など
⑤サンビーマー
セラミック製温熱物理療法
⑥サンマット
サンビーマー様温熱物理療法
⑦低周波物理療法
筋肉の弛緩、疼痛緩和を目的とした、刺入した鍼を用いた低周波パルス療法
⑧カッサフェイシャルトリートメント
⑨オイルフットマッサージ
参考資料
東洋療法学校協会編 はりきゅう理論
東洋療法学校協会編 新版東洋医学理論
東洋学術出版 中医基本用語辞典