月刊つぼこの部屋ということで、毎月ひとつのツボを深く掘り下げてご紹介しております。
今月は「手三里」です。
今回のツボは、経筋の反応として最強レベルの効を持つツボです。
ツボそのものが持つパワーというより、そこに存在することに意味があるような、ちょっと何言ってるのかわかんない感じですが・・・
今まで紹介したツボのような要穴ではないのに、こんなに使えるツボは他にないのではと思います。とにかく、お試しください!!
【手三里】のツボの位置
ツボ:手三里
読み:てさんり
所属:手の陽明大腸経
位置:肘の外側、肘関節から指3本分下がるところ
【手三里】のツボを取るコツ
・肘関節の外側と手関節の親指側を支点にして、ゆるく線で結びます。その線上で、手三里を探します。
・手首を上の反らせる背屈(伸展)の動きをすると筋肉がわかりやすくなるので、手首を軽く動かしながら指の腹でイタ気持ちいいところで探しましょう。
・私が鍼を打つときは、腕橈骨筋と長短橈側手根伸筋のスキマを狙っています。筋腹を狙うより鍼の響きがまろやかになるような気がします。参考までに。
余談ですが、ゆるく腕組みをするように反対側の手の親指で押さえると、ヒトの話をさも真面目に聞いているような雰囲気を醸し出しながらツボ押しができてつまらない話でも最後まで聞くことができるとか、できないとか・・・
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【手三里】肩こり・テニス肘・腱鞘炎・五十肩・マウス障害
【手三里】を押して痛い時に考えられる症状
手三里を押して痛い時に考えられる症状は、全般的に、腕の使い過ぎや、不良姿勢による筋疲労などが考えられます。
◆経筋関連
□運動器疾患
・外側上顆炎、いわゆるテニス肘
・ドケルバン病、いわゆる腱鞘炎
・肩関節周囲炎、いわゆる五十肩、四十肩
・頚肩腕症候群、いわゆる肩こり
・胸郭出口症候群
□他
・リウマチなど関節炎が起こりやすい自己免疫疾患を持っている場合。
・産後、更年期、ピルなどのホルモン剤服用等、ホルモンの乱高下が起こりやすい状況にある場合。
明確な診断名が付かないものや、筋疲労によるものも含まれると考えます。
肘関節だけでなく、その上下にある肩関節や手関節も連動して使うことになるので、幅広い範囲で影響があります。
「手三里」が属する陽明大腸経の経筋は人差し指の先から腕、肩を通って肩甲骨の内側までつながっていますので、デスクワークでのマウスやキーボードの使い過ぎによるものや、在宅ワークやリモートワークにおいて仕事環境が整わない場合の姿勢不良により首、肩、背中、腕など身体の痛みが出ている場合にも、「手三里」を押すとイタ気持ちいいことがあるでしょう。
【手三里】を押して痛い時にあなたができる対策
「手三里」のお灸のやり方
・適度な熱さのお灸
・1~3日に1度の間隔
・気血の補充や手の冷えを緩和することが目的の場合はお灸でいいと思います。
「手三里」の指圧による押し方
・イタ気持ちいいくらいの圧
・1~3日に1度の間隔
・筋肉の緊張が強い場合には、指の腹を使うようにして押しすぎないように気をつけましょう。
背中や肩など、筋肉のコリが広範囲に及んでいる場合には指圧と合わせてストレッチなど軽い運動を行いましょう。
疲労が積み重なり、食事や睡眠が不足している場合や、手の冷えがある場合はお灸をしてゆっくりされることをおすすめします。
【手三里】を走行する筋肉とマウス障害・テニス肘
「手三里」を押して痛みがあり、同時に手首や肩にも痛みが出ている方にお伝えしていることにひとつにマウス対策があります。
2枚の写真を比較していただきます。どちらがより身体の負担が少ないでしょうか。
1枚目は手首の向きや肘の位置、脇の開き具合を比べてみましょう。
A:フラットタイプのマウス
手首を内側に入れる状態になり、手首と机が平行になっています。肘が上がり、脇が開いている状態です。写っていませんが、肩が上がっていると想定されます。
B:エルゴノミクスタイプのマウス
Aと比較して手首を内側に入れる角度は2/3くらいで、手首と机は垂直に近い状態です。
脇は締まり、肩から肘はまっすぐ降りています。
2枚目は手首と机のスキマを比べます。
A:フラットタイプのマウス
手首と机が平行になっているので、すき間はあまりありません。
B:エルゴノミクスタイプのマウス
手首と机の間に空間が生まれやすく、手首が浮いた状態になりやすいです。
この空間を埋めるべく、リストレス付きのマウスパッドをお使いになることをお薦めしています。さらに、手首と手の甲がフラットに近いほうがより負担が少ないです。
このように、フラットタイプのマウスに比べて、エルゴノミクスマウスのほうが肘から手首まで過剰に捻じられることがなく、肩や背中の姿勢の崩れも予防できます。リストレストやマウスパッドなどを併用するとさらにグッドです。
手首が上がる動きを背屈、もしくは伸展と呼びます。手三里を走行している長短橈側手根伸筋や総指伸筋は手首を上げる働きがありますが、マウスタイプやマウスパッド、モニターと視線の高さなどの不具合によって過剰な筋緊張と長時間に及ぶ作業により負担さらにかかることが考えられます。
テニス肘に代表される肘関節外側上顆炎も、短橈側手根伸筋の緊張により付着部である上腕骨の外側上顆に炎症が起きます。おもにシングルバックハンドで発症しやすいですが、筋力が弱く手打ちになりやすい女性にも見られます。テニス肘対策として使われるエルボーバンドは、「手三里」をパッドで押さえることにより付着部である外側上顆にかかる圧を緩和しています。
筋肉は2つの関節をつなぐ役割があります。手首が痛いなら肘の角度、肘関節が痛いなら肩、肩関節が辛いなら背中、と体幹に近い関節の使い方や姿勢を見直しましょう。
それ以外にも、すでにあちらこちらに不具合が生じている方にとって、手のひらを下に向ける回内の動きはよほど気をつけないとスジや関節を痛めます。雑巾絞りやペットボトルのキャップを開ける動きなど、調子が良くないときは無理しないように気をつけてくださいね。
【手三里】の名前の由来など
三里と名のつくツボがもう一つ、足三里があります。どちらも頻繁に使われるツボであり、
足をよく使うときは足三里
手をよく使うときは手三里
足三里と区別するために手三里と名付けられています。
まとめ【手三里】肩こり・テニス肘・腱鞘炎・五十肩・マウス障害
「手三里」を押して痛い時に考えられる症状は、肩こり・テニス肘・腱鞘炎・五十肩・マウス障害・胸郭出口症候群などがあります。
経絡は気血の運行や五臓六腑の連絡路でありますが、経筋は滋養する筋肉や骨のことであり、精神や臓腑の不調が経絡を活用するならば、経筋は筋骨格系の不調において活用されます。筋膜リリースが普及しておりますが、筋膜の繋がりは経筋の走行とかなり似通っているといわれます。
肘の外側にある「手三里」で、手首の腱鞘炎が、肩こりが、五十肩が、背中のこりや張りが、なぜ緩和するのか本当に不思議ですね。ツボの持つ作用を最大限に生かすことも、筋肉の走行や関節の動きを踏まえてツボを活用することも、どちらも鍼灸の面白さのひとつだと思います。
鍼の効果は永久ではありません。鍼や指圧、お灸で悪くならないようにケアをしながら、見直すべき習慣や、身体の使い方、作業に用いる道具など改善できるポイントを探して、快適な環境づくりにつながるようお手伝いできればうれしいです。
10月のつぼこの部屋「太衝」はいかがでしたでしょうか。
それぞれの症状は点々と個別に出ているように見えても、東洋医学のレンズ越しに覗いてみると、点と点がつながり合って、一本の線となり、ひとつの道になることがあります。
ひとつの症状はセルフケアでも対応できることがありますが、ふたつ、みっつと増えていく場合には、早めに専門家にご相談されることをおススメします。
こじらせると、その分回復までの時間も要しますからね。
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アナログ版は、店頭にあるチラシボックスか受付にて配布しております。
ポストカードサイズになっておりますので、ぜひお手に取ってご覧くださいませ。
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