不妊鍼灸治療
不妊鍼灸治療とは
不妊鍼灸治療に関するコラムをまとめました。当院が考える中医鍼灸治療を踏まえて参考にしてください。
不妊鍼灸治療にあたって
私は2011年より不妊鍼灸専門の鍼灸院にて臨床に携わるようになり、2017年より婦人科付属鍼灸院にてあらゆる世代の女性のお悩みに鍼灸治療を行っています。不妊鍼灸に10年以上携わってきて、臨床の環境や患者層などの変化により私自身の思うところも変化してきていると感じています。コロナ禍や女性の社会進出、不妊治療の保険適応など社会的な状況の変化、自分自身でも人生経験を多少重ねてきたことも影響し、不妊鍼灸という一面だけでなく、女性の人生として捉えてみてはいかがかしらと先人たちの声が聞こえてきそうな毎日を送っています。
2011年に初めて不妊鍼灸治療を学び始めた頃は、東京都内でも両手で余るほどの鍼灸院しか不妊鍼灸を掲げておらず、全国でも二けた台だったように思います。当時は渋谷と西新宿を掛け持ちで担当しておりましたが、人工授精(AIH)の方が数名いらっしゃるほどでそのほとんどが体外受精(IVF)顕微授精(ICSI)の患者様でした。自費で高度生殖医療を続けている方にとって不妊鍼灸がさいごの砦のようなポジションだったように感じていました。
2017年より現在も兼務している婦人科付属鍼灸院の運営は、がん検診から、妊婦検診、女性内科などを幅広く担うクリニックが行っています。不妊治療分野ではタイミング法の指導や人工授精(AIH)を受けることができ、クリニックからの勧めもあってか比較的早い段階から不妊鍼灸治療を取り入れている方が多い印象です。クリニックでホルモン値検査や精液検査を受ける前から、身体の状態を整える目的で不妊鍼灸治療を受けに来る健康意識の高い方もいらっしゃいます。
全ての治療院がそうとは限りませんが、不妊症クリニックを卒業する時期と同じ約12週で不妊鍼灸専門鍼灸院も卒業となることが多いのではないでしょうか。現在、週に3~4回兼務しているこの婦人科付属鍼灸院では、婚約中でこれから妊活をはじめるという方から、他院で体外受精・顕微授精をしている方まで幅広い方がご来院されます。
無事、妊娠されてそのまま出産までマタニティケア鍼灸やマタニティマッサージを受けに来る方、逆子になって逆子鍼灸を受けに来る方、産後にお子さま連れで来てくださる方、その他ほんとうに幅広い世代の方がご来院されます。子どもを望み、授かり、産み、育てているなかで身体の不調が出てくることはそれぞれにあると思いますが、その改善策として鍼を受けに来てくださる方がこんなにいることに驚きました。クリニックと連携ということで安心感もあるのだと思いますが、不妊鍼灸専門の治療院では経験できないことでした。
結婚し子供を望まれる方が年々減少傾向にあるなかで、子を望み不妊治療に取り組まれているご夫婦は希望です。妊娠12週という区切りではなく出産の前まで、また産後もお身体を診させていただくことで、心身ともに変化しやすい時期を少しでも穏やかに過ごせるようかかりつけ鍼灸院として環境づくりができればと思っています。
2023年10月10日
sueruが選ばれる5つのポイント
女性鍼灸師・柔道整復師としての経験から感じたことを踏まえ、スエールでどんな医療サービスを受けられるのか、身体を預けて大丈夫なのか、来てくださる方の視線になってみるとほんとうにキリがありません。身体を触れる触れない、意識の確認や同意など、以前よりボーダーが変わってきていることを感じます。
我々は触れること前提の職業ですが、同性異性関わらず敬意持って施術にあたることを忘れずに、また鍼や灸、マッサージによる皮膚刺激の恩恵も大いにありますので、その辺りはまた今度お伝えできればと思います。
[1]プライバシーに配慮した半個室
女性特有のお悩みをお持ちの方の鍼灸治療では、お話しする内容も個人的でデリケートな話題になることがほとんどです。日当たり良く、緑豊かで開放感のある室内にて、少しでも落ち着いて話せる空間づくりを心がけています。もちろん、われわれ鍼灸師には守秘義務があります。日々の疲れや悩みから開放され、安心して施術を受けていただくにあたり、必要な環境だと考えています。
[2]スケジュール管理のしやすい予約制
私自身、終わる時間が読めないと困ることも多く、待つことも苦手です。。。毎日忙しい合間の時間を割いてご来院いただく皆さまに、余分な待ち時間をいただくことはありません。
初回カウンセリング20分+施術時間60分+会計5分、最短計85分でお帰りになれます。
[3]サンビーマー追加料金なし
サンビーマーはセラミック製の人体と同じ波長をもつ赤外線治療器です。
サンビーマーに出会ったのは前職西新宿sekimura鍼灸院でした。子宮や卵巣の血流改善に効果あるとされ、不妊鍼灸治療のバックアップをするためには欠かせないものです。
また、骨盤内の血流を良くすることは不妊症に限らずすべての世代に必要な温熱療法であり、その必要性から、鍼灸治療に追加料金をいただくことなく標準装備にしています。
[4]吸玉/カッピング追加料金なし
吸玉/カッピングは本場中国で伝統的に用いられる手法のひとつです。当院ではガラスでできた吸玉を背中や手足などに装着する方法を用いていています。アルコール綿花を用いてすべて手作業で行いますので、身体の凹凸に合わせた細やかな圧の調整が可能です。筋肉の緊張緩和、気血の滞りの改善が期待できます。
吸い玉をつけた痕が残ることが唯一の副作用ですが、残った痕の色見なども体質や体調の判断材料になります。初回が最も痕が付きやすく、1週間ほどで薄くなり、回を重ねるごとに痕が付きにくくなる方がほとんどです。鍼が不安な方でも吸玉は安心して受けることができるようです。
[5]婦人科専門鍼灸師・施術歴20年
高校を卒業してからすぐに柔道整復師を目指し、30歳で鍼灸師・ヨガインストラクターになり、施術歴は20年以上になりました。鍼灸学生の頃より婦人科領域専門の鍼灸師の必要性を感じ、不妊専門鍼灸院や婦人科付属鍼灸院で臨床経験を重ねて参りました。
女性の社会進出が進み、不妊治療が保険適応になり、男性の育休取得が義務化され、表向きには女性が生きやすくなったように見えますが、女性の身体が進化しているわけでは決してありません。時代の変化に合わせて適応できるメンタルや身体を作っていくお手伝いができればうれしいです。
sueruが選ばれる5つのポイント・まとめ
[1]プライバシーに配慮した半個室
[2]スケジュール管理のしやすい予約制
[3]サンビーマー追加料金なし
[4]吸玉/カッピング追加料金なし
[5]婦人科専門鍼灸師・施術歴20年
以上、当院の特徴を5つのポイントに分けてご紹介いたしました。参考になさってください。
2023年8月30日
特殊セラミックス赤外線「サンビーマー」の不妊治療における温熱効果
当院で使用している特殊セラミックス赤外線温熱治療器「サンビーマー」の不妊治療における温熱効果についてご紹介させていただきます。
現在不妊治療をしている方
これから不妊治療をはじめようとお考えの方
不妊治療をしていてサンビーマーを気になっていた方
すでにサンビーマーを体験したことがある方
すべての皆さまに当院でサンビーマーを導入している理由を知っていただきたいと思います。
ぜひ、最後までお読みいただけたら嬉しいです
サンビーマーとは
サンビーマーはサンメディカルより発売され延べ3万台以上生産されている温熱治療器です。不妊治療を取り扱っているクリニックや、当院のような不妊鍼灸を行っている鍼灸院で導入されている場合が多いです。サンビーマーの代表的な特徴が、生体と同じ波長の赤外線を放出し、皮膚抵抗が起きることなく人体に照射することができるということです。
サンビーマーの基本的な温熱効果について、つづきはこちらの記事をご参照ください。
不妊治療において重要なのが、血流の改善です。とくに子宮や卵巣を納める骨盤内の血流の改善は最重課題です。当院でも鍼・灸・吸玉・低周波パルス・整体・ストレッチなどを組み合わせ、腰殿部の筋肉や鼠径部の緊張緩和を目的とした不妊鍼灸治療を行っています。鍼灸治療をバックアップするために導入しているサンビーマーですが、具体的にどのような効果が期待できるのか気になるところですね。
子宮と卵巣について
子宮は左右一対あり、鶏卵大の大きさで、受精卵の着床や、定期的な子宮内膜の剥落による月経が起こる器官です。骨盤内では正中線にあり子宮の前下方に膀胱があり、後方に直腸があります。体表からでは、へそと恥骨の間、やや恥骨よりを目安にしています。
卵巣は親指の先ほどの大きさで、下垂体ホルモンによる指令により卵子の成熟、排卵を行い、排卵後も黄体や白体からホルモン分泌を促す生殖器において中心的な働きをしている器官です。骨盤内では子宮広間膜にて卵管や子宮とつながっています。排卵した卵子は腹腔内を経由し卵管采に捕まえられて子宮へ向かいます。体表では、左右の鼠径部の中心からやや上方を目安にしています。
いずれも体表のすぐ下にあるわけではなく、3Dのイメージを持ってツボを探す方向などを調整しています。
「サンビーマー」の不妊治療における温熱効果
今回ご紹介する事例は、不妊治療を行うクリニックにて「胚移植を2回以上行うも、妊娠に至らなかった39歳以下の5症例」です。
条件は下記の通りです
◆1日1回以上、1回につき30分以上使用する
◆サンビーマー使用開始から4周期目に刺激周期で採卵を行う
結果は下記の通りです
◆D3/FSH値・LH値・AMH値は変化が見られなかった
◆卵巣近傍血管および子宮近傍血管の血管抵抗値は低下した
◆その後のART治療で3例が妊娠に至った
⇒骨盤内の血流改善効果が確認された
解説
鍼灸の併用はありませんので、サンビーマーだけでも十分血流改善の効果が確認できています。しかし、 D3/FSH値・LH値・AMH値の変化は見られなかったということで、卵巣機能そのものが回復することはなく、機能低下もないことがわかります。ホルモン値の変化が見られなくても卵巣・子宮の周りの血流は回復し、なおかつ妊娠につながったことは、不妊治療において骨盤内の血流がいかに重要かを示しています。変化が見られた情報として下記の通りです。
①胚盤胞
5症例すべてにおいて胚盤胞到達率の改善が確認できた
②胎嚢確認
新鮮胚移植2/5症例
凍結融解胚移植1/3症例
③妊娠
3/5症例で妊娠に致る
[結論]
サンビーマーによる温熱療法がART不成功症例に対して有効である
参考論文
「遠赤外線照射(サンビーマー)を用いた温熱療法」
第55回日本生殖医学会学術講演会
山下レディースクリニック
「遠赤外線照射(サンビーマー)を用いた温熱療法がART不成功症例にもたらす効果」
第28回日本受精着床学会学術講演会
山下レディースクリニック
特殊セラミックス赤外線「サンビーマー」の不妊治療における温熱効果まとめ
◆1日1回3か月のサンビーマーの照射後の採卵で胚盤胞に至った
◆HR値に変化はないが卵巣・子宮の周りの血管抵抗が低下した
◆サンビーマーによる卵巣・子宮の血流回復により妊娠に至った
血流の滞りが起こっている部分はひとそれぞれで、腰殿部の筋肉の過緊張によるものや股関節や鼠径部、膝や足などの関節で停滞するものなどケースバイケースです。鍼・灸・吸玉・低周波パルス・整体・ストレッチなどを組み合わせた当院の不妊鍼灸治療では、まさに滞りが起こっている部分にポイントでアプローチできます。サンビーマーでは、鍼灸などよりもさらに幅広いエリアに照射することができますので全身の血流改善を目的とした温熱療法が可能です。60分で同時に施術することができるのは、とても効率が良く、赤外線と鍼灸の親和性の高さも魅力的です。
現在不妊治療をしている方
これから不妊治療をはじめようとお考えの方
不妊治療をしていてサンビーマーを気になっていた方
すでにサンビーマーを体験したことがある方
すべての皆さまに当院でサンビーマーを導入している理由を知っていただきたいと思います。
人体が発する赤外線と同じ波長のサンビーマーならではの浸透の良さをぜひご体感ください。
2023年8月4日
特殊セラミックス赤外線温熱治療器「サンビーマー」の温熱効果
当院で使用している特殊セラミックス赤外線温熱治療器「サンビーマー」の温熱効果についてご紹介させていただきます。
サンビーマーをご存じなかった方
サンビーマーを知っていて気になっていた方
すでにサンビーマーを体験したことがある方
すべての皆さまに当院でサンビーマーを導入している理由を知っていただきたいと思います。
ぜひ、最後までお読みいただけたら嬉しいです。
サンビーマーとは
サンビーマーはサンメディカルより発売され延べ3万台以上生産されている温熱治療器です。不妊治療を取り扱っているクリニックや、当院のような不妊鍼灸を行っている鍼灸院で導入されている場合が多いです。
サンビーマーの代表的な特徴が、生体と同じ波長の赤外線を放出し、皮膚抵抗が起きることなく人体に照射することができるということです。照射温度は段階によって調節できますが、体感的に温かさを感じることがなくとも、赤外線の効果を受けることができます。神経症状やその他の持病によりで皮膚の温度感覚が鈍くなっている場合は、低い温度に設定し安全な方法で温熱療法をすることが可能です。
また、体内に金属が埋め込まれているかたや、低周波などの物理療法ができないかたにもサンビーマーを照射することができます。
温熱療法の効果
温熱療法はからだに熱を加えることにより何らかの健康的メリットを期待するものですが、特別なものを使わなくても行うことができます。たとえば、温泉や自宅での入浴も温熱療法のひとつです。また、お灸は熱によりツボの効果を引き出し、カイロで温めることで低温による体調不良の予防をしています。
温熱療法の効果として
・筋肉の緊張を緩和する
・血流を促進する
・痛みを緩和する
・胃腸の働きを活発にする
・ストレスの軽減
・リラックス、リラクゼーション効果 などが期待することができます。
温泉とサンビーマーとの違い
温泉やお風呂でも温熱療法を受けることができるなら、わざわざサンビーマーを使わなくてもいいのではないかという意見をお持ちの方もいらっしゃるでしょう。では、温泉にはなくて、サンビーマーにはあることはなんでしょうか!
①服を着たまま温熱療法を受けることができる
布団やタオルをかけたままでも大丈夫とのことです。
着替えることなく寝た姿勢で照射することができるので、正直かなり楽です。
②熱く感じなくても照射できる
発表されている論文では、1回につき30分以上の照射を推奨しています。状況にもよりますが、30分以上入浴することで心肺機能に負担をかけすぎたり、体調不良を引き起こしたりする可能性もあります。サンビーマーなら、30分以上でも負担のない温度設定で照射できます。
③特殊セラミックス
一般的な赤外線治療器も医療機器として認められているものがほとんどですが、熱源は赤外線の電球です。電球が当たる照射部位も限られており、局所的に熱くなってしまい結果的に広い範囲での照射が難しいことがあります。サンビーマーは特殊セラミックスの板が設置されています。セラミックの板が均一に温まり、人体の波長と近い赤外線の波長を広い範囲で均一に照射することが可能です。
平均身長の女性であれば、下肢なら膝からつま先まで、背中なら首から腰までが一度に照射できます。局所的に熱くなることもなく、浸透しやすい波長の赤外線を広範囲で照射することができ、施術時間のなかでも効率的に使用することができています。
特殊セラミックス赤外線温熱治療器「サンビーマー」の温熱効果まとめ
☆特殊セラミックスにより人体と同じ波長の赤外線波長をもつため、赤外線が浸透しやすく、熱さを我慢することなく心肺機能に負担をかけません。
☆服を着たまま受けることが可能で、鍼灸治療の間に温熱療法を併用できるため効率的です。
☆温熱療法により、筋肉の緊張や身体の痛みを和らげたり、胃腸の働きを活発にさせたり、ストレスを軽減させリラックスすることが期待できます。
サンビーマーをご存じなかった方
サンビーマーを知っていて気になっていた方
すでにサンビーマーを体験したことがある方
当院でサンビーマーを導入している理由をご周知いただけましたでしょうか。全ての鍼灸治療でサンビーマーを使用しています。ぜひ、サンビーマーの浸透の良さをしみじみと味わっていただけましたら幸いです。
2023年8月18日
中医学×月経診断
2011年より不妊鍼灸治療に関わり、2017年より中医学を取り入れた婦人科分野の鍼灸治療を行ってまいりました。不妊鍼灸臨床歴10年以上の経験を踏まえて、中医学からの視点で月経を分類してみますので参考になれば幸いです。月経の様子や体調に関するポイントなど、自分の身体を知るきっかけとしてお読み頂ければと思います。
中医学では、妊娠経験のないものを「全不産」または「無子」、妊娠経験のあるものを「断緒」といいます。
西洋医学的には、避妊をしていないのに1年以上にわたって妊娠に至れない状態を不妊症と定義します。35歳以上の場合には6ヶ月の不妊期間が経過したあとは検査を開始することを推奨しています。(日本産科婦人科学会より)
不妊の原因は様々ですが、中医学的な体質診断ではどのように不妊症をとらえているのか確認していきましょう。いくつ当てはまるか、普段の生活を思い出しながらチェックしてみてください。
腎気虚×月経
□経血量は少ない
□月経が遅れやすい
□腰や膝がだるい
□疲れるとめまい・耳鳴りがする
□倦怠感が抜けない
五臓六腑のなかで「腎」は生殖機能の主体となり、成長や性機能に関与しています。「腎気」が弱まると生殖機能の低下、腎精が枯渇し、全身的な活力が低下していきます。妊娠するためには(排卵の時期に)タイミングを合わせ、(性交渉の)回数を増やし妊娠する確率を高めることが必須なのですが、腎気虚の場合は消耗しすぎてしまう場合があります。
腎陰虚×月経
□経血量は少なめ
□月経周期が短い
□顔面が青白いなど貧血傾向
□産後あるいは多産の経験がある
□手足がほてりやすい
「腎気虚」との違いは、貧血症状など血の不足を伴うこと、手足のほてりなど虚熱症状を伴うことです。
血の不足=血虚がひどくなると陰虚に進行しますが、流産や出産の経験がある場合には基本的に陰虚が確認できると想定しています。陰虚体質の方は標準~やせ型体型のことが多く、睡眠時間を確保し、ダイエットを意識している場合にはほどほどに。。
胞宮寒冷×月経
□下腹部の冷感
□寒がり・冷えやすい環境
□経血色は紫暗
□経血量は少ない
□尿は希薄
冷えを訴える妊活女子は約9割(イヌヅカ調べ)ですが、本当にガチの冷え症はほんの一部です。その一部が、この胞宮寒冷=腎陽虚です。「下半身が水につかっているような感じ」「湯舟でしっかり温まったはずなのに上がるとすぐに冷える」など、まるで皆で口を合わせたようなフレーズが出てくることがあります。
痰湿×月経
□標準~肥満体型
□惣菜・コンビニ・外食が多い
□スイーツは毎日
□むくみやすい
□身体が重だるい
味の濃いものを食べているかどうかは、自分では気がつかないのかなと思っています。甘党も辛党も共通するのは、甘いものやしょっぱいものを食べた後はのどが渇きやすいので水分摂取量が格段に増えます。消化に負担がかかりますので水分を体内に貯留させやすく、エンドレスなむくみコースが循環している状態です。
血瘀×月経
□経血の塊がある
□刺し込むような生理痛
□血塊が排出されると生理痛が緩和する
□経血色は紫暗
□舌下静脈が浮き出ている
血瘀、もしくは瘀血では、ほかの体質と絡んで発生する場合がほとんどです。血の運行が渋滞により、淀んで停滞している状態です。濃く、煮詰まったイメージです。停滞するので、痛みもあちこち移動することはなく、下腹部・恥骨部・尾骨部・会陰部など固定しているのも特徴です。
肝鬱気滞×月経
□イライラ・落ち込みなど情緒不安定
□焦り、追われる感じがする
□胸が脹れ、時に苦しい
□冷えやほてりは感じない
□月経周期が乱れやすい
不妊治療をしていて、気がうっ滞しない人はいません!仕事や家庭との両立だけ、通院のスケジュール調整、投薬による副反応、周囲とのバランス、情緒を乱す要因であふれています。いい意味で気をそらす、集中できる趣味を持つ、推し活など、オンオフの切り替えを!!
まとめ
これら5つの中医学的体質診断は、単体でも発生することもありますが、ほとんどの場合2~3つの組み合わせで出現します。もともと生まれながら備わった体質があるとして、その状態が病的なほどに逸脱しないように調整することが鍼灸治療の本質です。
いいほうに変えるのは時間がかかりますが、よくないほうに引っ張られるのはあっという間です。
体質的コンディションを保ちつつ、周期や治療段階に応じた鍼灸治療によって妊娠のための身体づくりをしたい、そんな女性たちが不妊鍼灸治療を取り入れている傾向があります。
後悔しない妊活ができるよう、婦人科分野を専門とする女性鍼灸師の立場からこれからも応援しています。
2023年5月19日
月経前症候群(PMS)のイライラと不妊鍼灸
月経前症候群は「げっけいまえしょうこうぐん」と読みますが、短くして通称「PMS」と呼ぶこともあります。月経のある女性の70〜80%は月経の3〜10日前よりなんらかの体調の変化を感じ、40%が月経前症候群(PMS)として治療が必要とされ、5〜20%は日常生活に支障がでている、と教科書的には言われておりますが、みなさんはどうでしょうか。
月経前症候群PMSのイライラと不妊鍼灸
私は鍼灸師なので確定診断をすることはできませんが、不妊鍼灸を受けに来られる方の中で月経前症候群と思われる患者さんにお会いすることは多いです。そして、不妊症に限らず、一般的な鍼灸治療を定期的に継続していくと月経前後の体調不良が軽減していく方がほとんどです。
不妊治療をしている女性において、月経前は次の生理が来てしまうかどうか不安な時期でもあり、精神的なストレスはかなり大きい時期です。穏やかな性格の方でも沸点が低くなるというか、イライラも落ち込みもどちらも最大限の振れ幅を感じます。月経前症候群の簡単な説明と、月経前症候群の中でも特にお困りの方が多いイライラについて、不妊鍼灸治療からの視点での体質タイプ分けをご紹介いたします。
妊活をしている女性にとって誰もが情緒が不安定になりやすい時期ではありますが、少しでもあなたらしく過ごせるよう、不妊鍼灸師の立場からお伝えできることをまとめましたので、ぜひ最後までお読みいただけると嬉しいです。前置きが長くなりましたが、さっそく行きましょー♪
月経前症候群(PMS)とは
月経前、3〜10日の間続く精神的あるいは身体的症状で、月経開始とともに軽快ないし消失するものをいいます。生理前とは何日前からなのか、わかりにくい方もいらっしゃるかもしれません。28日周期の場合生理10日前とは、生理初日から数えて18日目と同じですよね。
こちらの図をご覧ください!
28日周期場合、生理14日頃が排卵期になりますが、基礎体温測定や排卵チェッカーをお使いでない場合には、生理初日から数えて14日前後を排卵期と予測します。
それ以降がPMSに関係するホルモンとして代表的なプロゲステロンの分泌が高まる高温期となります。
高温期の真ん中あたりの生理20日前後でプロゲステロンが最高値を迎え、PMS注意報が発令される時期とリンクします。
月経前症候群(PMS)の診断基準について
何周期か振り返ってみて、お悩みの症状が月経周期と連動するかどうかがポイントです。日常生活に支障が出ているかどうか、仕事や家事、育児などが無理なく行えているかどうかなど、なんとなくの感覚だけでなく日記やアプリなどで記録として残しておきましょう。診断基準によれば症状の数は問わないとされていますが、同じ症状の辛さの程度や辛いと感じた時期などの繋がりを残しておくと医療機関を受診した際や鍼灸を受けに行った際などに伝えやすいと思います!
[月経前症候群(PMS)診断基準まとめ]
□特徴的な症状が月経の3~10日前に出現し、月経が始まると軽減する。
□症状のために日常の生活に支障をきたす。
□症状は、少なくとも数周期にわたり、同じような時期に同じような症状が反度する。
□症状の数は問わない。
月経前症候群(PMS)の症状
診断基準からもわかるように、症状の内容よりも月経の時期と連動するかどうか、また辛さが重要なポイントですね。
[からだの症状~お腹関連~]
□下腹部が張る
□腹痛
□お腹がゆるくなる
[からだの症状~お腹関連~]
□胸の張り
□乳房痛
[からだの症状~消化器関連~]
□吐き気
□気持ちが悪い
□便秘
□下痢
[からだの症状~痛み関連~]
□頭痛
□偏頭痛
□関節痛
□筋肉痛
□腰痛
□股関節痛
[からだの症状~自律神経の乱れ関連~]
□倦怠感
□だるさ
□熱っぽい
□のぼせ
□めまい
□むくみ
□浮腫み
[こころの症状~情緒関連~]
□炎上系
・イライラ
・食欲の異常
・過食傾向
□ダウン系
・気分の落ち込み
・抑うつ
・不安感
・喪失感
・孤独感
[こころの症状~睡眠関連~]
□不眠
□入眠困難
□中途覚醒
□悪夢
□他
・臭いに過敏になる
・性欲の変化
・集中力の低下
・判断力の低下
月経前症候群の症状が確認できる場合には、不妊鍼灸治療では出現してる症状の軽減を第一目標とします。
初めにも書きましたが、妊活をしている女性にとって生理予定日前ほどストレスなことはありません。
妊娠の可能性があるのかないのか、希望と不安で平常心でいる方はほとんどいないと思っていて、表に出すタイプか、クールに隠すタイプかでかける言葉や話す内容などは微妙に変えています。
月経前症候群のなかでも特に影響が出やすいイライラなどの精神状態について、東洋医学的分類をご紹介しますので、参考になさってください。
[タイプA 肝鬱気滞]
【特徴】
ストレスのすべてが誘因となり気の滞りを発症します。家族間の遠慮のない会話、同僚の仕事ぶり、後輩の面倒、旦那さんの何気ない言葉や態度、全てがイライラの源です。イライラが沸々としていて、噴火したいけど理性で抑えているので、余計に消化不良になり自分を追い込んでしまっているかもしれません。イライラしたくて、イライラできるネタを探している、そんな風に言う先生もいて、ああ層かもなあ、なんて思いました。炎上→噴火は気の発散になりますから。。。
【症状】
気滞によるもの
□乳房の張ったような痛み
□脇の下の張ったような痛み
付随する消化器症状
□食欲不振、あるいは過食
□軟便
舌診
□薄いか、やや厚くなります
【治法】
疏肝理気
・肝の臓の暴走を落ち着かせ、気の巡りを静めます。
・泣ける映画か、思い切り笑える漫画など、自分が気に入っている物、事に囲まれましょう。推しがいる方は、カラオケやライブなど最高の特効薬です。
・イライラは気の上昇傾向が強くなっておりますので、体のなかでも足元の方へ気を降ろすようなイメージで施術いたします。
【ツボ】
肝兪:背骨の両側に連なる兪穴のツボのひとつ
太衝:足の甲にある、理気の代表
内関:胸郭部のつまりを解き、呼吸が入りやすくなるツボ
[タイプB 痰火]
【特徴】
タイプAの進化版、肝鬱気滞+痰=痰火がタイプB。
痰とは、代謝サイクルの中で使われずに濃縮し病理化した体内水分のことを呼びます。肺疾患で出てく痰はもちろん、部位によって鼻水、腹水、脂肪なども痰に含まれます。
イライラが発散できず、沸騰しまくりで、圧力鍋が最高潮に達している状態です。
【症状】
心神の異常によるもの
□不安感・イライラの発散に対する落ち込み
□不眠・寝付けない
□炎上及び、発狂
淡火によるもの
□頭痛
□目の充血・炎症
□顔面の赤み・吹き出物
舌診
□舌苔は厚めで、白かクリーム色
□舌本体は紅め
【治法】
清熱去痰
・熱を冷まし、淡(=濃縮し病理化した体内の水分)の排出を促す。
・夜風にでも当たって、とにかく頭を冷やしましょう。
・他人に当たり散らすなどもってのほか。その時はスッキリするかもしれませんが、後から何であんなことを言ってしまったのだろうと後悔するパターンです。
【ツボ】
曲池:肘関節の外側
豊隆:前脛骨の真ん中
心兪:背骨の両側に連なる兪穴のツボのひとつ
神門:手首の外側
ご紹介したツボはどれも中医鍼灸治療ではよく使われるツボですので、つぼこの部屋でご紹介したものはリンクはっておきます。その他については、今後つぼこで取り上げる予定です☆
月経前症候群のイライラと不妊鍼灸 まとめ
月経前症候群と他の疾患との鑑別は採血などの精密検査をする必要がありますので、かかりつけの婦人科を受診することをおススメしています。鍼灸治療によって生理前のイライラが軽減することは多くありますが、経過が思わしくない場合には、月経前不快気分症候群(PMDD)などの精神疾患が疑わることもありますので、気分の落ち込みによって日常生活が潤滑に進まない場合はしかるべき医療機関を受診しましょう。
生理前のイライラや落ち込みを少しでも落ち着かせることができて、妊活に対してもそれぞれのカップルらしく治療を進めていけるよう鍼灸師としてサポートしていきたいと思います。タイプ分けを参考にしていただきながら、ツボの効能なども踏まえてセルフケアをしてみてもいいでしょう。わたくしの施術ではイライラにはお灸より鍼の方が適していると考えておりますが、ご自分でケアされる場合にはツボ押し、指圧くらいにしましょう。もちろん、鍼にご興味ありましたら鍼灸治療をご体験いただきたいです。ということで、月経前症候群のイライラと不妊鍼灸を終わります。
参考資料
日本産科産婦人科学会HP
武谷雄二著「PMS月経前症候群正しい知識をもつために」メジカルビュー社
「病気が見えるvol.9婦人科・乳腺外科第3版」メディックメディア
公益社団法人東洋療法学校協会「新版東洋医学臨床論(はりきゅう編)」南江堂
李世珍「中医鍼灸臨床発揮」東洋学術出版
2023年10月20日
冷えと黄体不全と不妊鍼灸と・・・
妊娠を望む健康な男女が避妊をしないで性交をしているにもかかわらず1年以上妊娠しないものを「不妊」といい、妊娠しやすい身体づくりを目的に行う鍼灸を不妊鍼灸といいます。
一般的な肩こりの鍼灸治療と大きな違いは、カウンセリングです。
当院では不妊鍼灸コース専用の問診表をご用意しており、婦人科疾患のことから通院中のクリニックで行った検査や数値、男性不妊に関する内容まで細かくお伺いしています。
病院情報と合わせて行うカウンセリングでは、東洋医学的な体質分類を十分に行い、妊娠を阻むウイークポイントはどこにあるのかひとりひとり分析させていただきます。
今回は「冷えと黄体不全と不妊鍼灸と・・・」ということで、代表的な体質5つをご紹介します。
ポイントを抑えているので細かい条件は省いていますが、とくに強く感じる症状があるものをご自身の体質、またその傾向があると考えていただければ十分です。
あくまでも代表的な5つですが、参考になるところもありますのでどうぞ最後までご覧ください。
5つの東洋医学的体質分類と不妊鍼灸
タイプA【腎陽虚】
身体を温める気=陽気が不足している状態
□寒がり
□手足の冷え
□冷えて浮腫む
□倦怠感や疲労感
□夜間尿・尿が希薄
□軟便
□低体温
□高温期の体温が低
□おりものは多く、希薄
□子宮内膜が薄め
腎の生理作用は精を蔵すること、腎が蔵する精を腎精、といいます。腎精は生命力そのものです。
腎陽虚により腎精が不足すれば、老化が早まり、精力の不足、初潮の遅れや無月経いつながります。
腎精は生命力そのものなのです。
タイプB【腎陰虚】
身体の熱を冷ます気=陰気が不足している状態
腎陰虚により腎精が不足すれば、老化が早まり、精力の不足、初潮の遅れや無月経いつながります。
□めまい・耳鳴り・頭痛
□不眠
□手足のほてり
□頬の紅潮
□寝汗
□便秘
□おりものが少ない、ない
□膣の乾燥
□排卵期の頸管粘液の伸びが確認できない
□子宮内膜が薄め
腎陰が不足すると余分な熱を冷ますことができず、上半身や頭頂部に熱が上昇し各種の不調を起こします。
熱による消耗により身体を滋養できないことで、のぼせなどの不調を起こします。
タイプC【肝鬱気滞】
肝の臓は血の貯蔵や身体の調和をコントロールする役割を担う臓ですが、肝の機能が落ちることにより気血の流れが停滞し、情緒の安寧が乱される状態です。
□感情の抑うつ
□イライラ、ストレスの発散ができない
□ため息がでる
□乳房の張り
□下腹部の膨脹感
□下腹部や腰仙部の月経痛・排卵痛
□月経不順
環境によるストレスや、情緒の乱れによるストレスなど、こころのざわつきが現れることが多いです。
タイプD【痰湿】
痰湿とは代謝されなかった水分が病理化し体内に貯留したものですが、水分に限らず各種脂肪や糖質なども痰湿に含まれます。
□BMI高値の肥満体型
□浮腫みやすい
□身体が重い
□倦怠感、だるさを感じる
□お腹が緩め
□卵巣機能不全
□おりものが多く、白っぽい
パン好きな女性は多いですが、洋菓子、パスタ、うどんなど糖質の多い食事はすべて痰湿の素となる可能性があります。また、脂っこい食事、甘いもの、塩味が強く味の濃い食事も痰湿の要因です。
タイプE【血瘀】
血瘀は全身的、瘀血は局所的、どちらも血流が停滞している状態を表します。
□下腹部の冷え
□月経前症候群(PMS)
□下腹部や腰仙部の月経痛
□子宮内膜症、子宮筋腫、子宮腺筋症など婦人科疾患がある
□月経血の血塊がみられる
□血塊が排出されると月経痛が和らぐ
□細い血管が浮き出たようなものがみられる
慢性的な骨盤内の血流障害を起こし「陰虚×瘀血」「肝鬱気滞×瘀血」など、合わせ技で襲い掛かってくることがほとんどです。
まとめ【冷え性と黄体不全と不妊鍼灸と・・・】
5つの体質をシンプルにひと言でまとめると・・・
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A 腎陽虚=冷え症の黄体不全傾向
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B 腎陰虚=のぼせと粘液乾燥
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C 肝鬱気滞=イライラと月経不順
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D 痰湿=甘いもの大好き女子
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E 瘀血=月経痛と婦人科病持ち
単品の場合もありますが、2,3つの病態が複雑に絡みあっていることがほとんどです。
当院では中医学を基礎とした中医鍼灸を専門としております。
□気・血・津液(水)・精・神などの身体を構成する基本的な生理物質の推移
□肝・心・脾・肺・腎の五臓
□胆・小腸・胃・大腸・膀胱の六腑
□脳・髄・骨・脈・胆・子宮の奇恒の腑
ぞれぞれの生理作用や機能特徴を踏まえた体質分析を行ったうえで、鍼を用いるのか、灸を用いるのか、あるいは用いないのかをひとりひとり見極めて施術いたします。
中医学の特徴として「いまを診る学問」ということがあります。「いま」を診ることについて、月のものに合わせて行う不妊鍼灸と中医鍼灸の親和性の高さを感じています。はり灸sueru(スエール)では子宮・卵巣だけを診て体質を決めることは決してせず、気血津液、五臓六腑、経絡のすべてを診させていただき、一回一回毎の施術の反応も踏まえて経過を追っていきます。子宮や卵巣は周期的に変化をすることはもちろんですが、気候が及ぼす体調不良、睡眠・食事・排泄、喜怒哀楽など感情の影響など日々の変化と、AIには出せない人間味を踏まえた東洋医学的体質分類を得意とするのが中医学的な不妊鍼灸です。
妊娠を意識した妊活をスタートしていることや、不妊治療をクリニックで続けていることを、ご家族以外に話している人がいない場合や、職場の同僚や友人など身近な人にも伝えていない方も少なくありません。そのようなケースでは、悶々とした毎日こそが気滞の要因となり卵巣や子宮の血流を悪くさせることもあります。プライバシーに配慮した個室にて、安心してお身体のことを話せる時間も必要です。不妊症の原因がはっきりとわからない方やや、おひとりで不妊治療を続けていらっしゃる方は、中医学を専門としている当院の不妊鍼灸コースでご自身の身体を一度見直してみてはいかがでしょうか。
参考資料
日本産科産婦人科学会HP
「病気が見えるvol.9婦人科・乳腺外科第3版」メディックメディア
公益社団法人東洋療法学校協会「新版東洋医学臨床論(はりきゅう編)」南江堂
李世珍「中医鍼灸臨床発揮」東洋学術出版
2023年11月3日